サイトへ戻る

全文公開:高橋若木『収容所なき社会と移民・難民の主体性』

 「対抗言論」1号に掲載された高橋若木氏の論考『収容所なき社会と移民・難民の主体性』の全文を、ウェブに公開しました。ぜひご一読ください。

 入国管理と収容所をめぐる過酷な現状は、収容された当事者の方々の抗議活動や命がけのハンスト、その家族の方々の訴え、また支援者の人々の地道な活動により、メディアなどでも取り上げられるようになってきました。

 しかし、当事者の方々をとりまく現実と日本の収容システムの問題性は、まだ十分に理解されておらず、十分に共有されていません。高橋氏の論考は、収容所をめぐる現実を知り、それを改善あるいは根本的に変革していくための、不可欠な視座を与えてくれるはずです。

 現在も、収容所内での新型コロナウィルスの蔓延、トランスジェンダーの被収容者の人権侵害などの問題が次々と明らかになっています。

 さらには、法務大臣の私的懇談会の下に設置された「収容・送還に関する専門部会」による提言には、国外退去の命令を拒んだり、「仮放免」中に行方不明になったりした外国人に対し(それらの事態がなぜ生じるかという根本問題に目を向けず)懲役・罰金などの刑事罰を科すという内容、あるいは、難民再申請者に対する強制送還を実施するという内容などを含み、極めて問題点の多いものになっています。

 母国での危険性を考慮して、日本国内での長期滞在を許可するのが難民認定です。しかし日本の行政は難民に対してほぼ門戸を閉ざしてきたため(申請者1000人のうちわずか4人しか認定されません)、たとえば今後、周庭さんのような民主活動家が身の危険を感じ、香港から日本に逃れてきた場合、十分な支援ができない可能性が高いのです。もちろんこれまでにもすでに、世界中から弾圧を逃れて日本にやってきた人々が日本列島の中で生活を営んでいます。

 収容所問題が日本という国の「政治」の問題であり、「政治」はむしろここから考えられなければならない。そのことが広く伝わってほしい、と本誌は願っています。